令和五年、私のベスト10

2023年も本日でおしまい。

ちゃんと恒例にしていきたい気持ちはある本年のベスト10記事です。

昨年までは以下に。

 

yahazukazura.hateblo.jp

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選出基準は以下の通り。

  • 私がその年に初めて読んだ小説・漫画
  • 同作者はベスト10の中で重複しない
  • シリーズものの途中は含まない
  • 三年入ったらその作家は殿堂入り

あくまでも私が読んだってところが大事なので急に古い作品とかが入ります。

現在殿堂入りしているのは斜線堂有紀さんです。2023年に読んだ斜線堂さんの作品も軽く振り返れたらな、と思ってます。

 

今年は二部門を追加しています。

 

一つはBL部門。今年読んできたものをざっくり見直して選出していたのですがぽこぽことBL作品が出てきたので……。今年の3月に再燃して一年で100冊近くジャンルとして読んでしまったので例外として。こちらは今年だけになるか来年も続けるかは未定です。

 

もう一つは完結作品部門。シリーズものの途中を含まない集計をしている以上、このベスト10を集計する前に出会った作品や完結したことで一気に評価をあげた作品を取り上げられない欠陥があると前々から思っていたため。こちらは来年以降も続けていきたいです。

 

では、紹介していきましょう。普段の記録もそうですが、がっつりネタバレはしないよう意識していますが内容についてふんわり触れるのでご了承ください。簡単な目次を用意しておきます。

 

 

ベスト10

銀河英雄伝説田中芳樹

今年一番夢中になって読んだ作品だと思います。

本編10巻、外伝5巻とそこそこ長いのにずっと面白く、2巻の衝撃に呻き8巻で大泣きしましたね。素直。

ユリアンとヤンの関係、ラインハルトとキルヒアイスの関係が好きです。外伝は旨味たっぷりでしたね。また時間をとって読み直して堪能したいな。

 

『自由研究には向かない殺人』ホリー・ジャクソン

三部作通してのこの位置づけ。

と言ってもやはり一巻の捜査のワクワク感が一番読んでいて楽しかったな。最初のページを開いて自由研究の計画書が出てきた時の高揚ったらない。即座に先生からの注意点を破っていくピップにこういう主人公か!とわかるところも良い。後半、2巻以降のラヴィとの親密さの描写などもイギリスのリアルな学生カップルを感じられて良かったです。

近しい事件を調べることの辛さ、虚しさなんかが強く感じられる作品。

 

『ラブカは静かに弓を持つ』安壇美緒

私が昔チェロを弾いていたってのがベストに入れるほど入り込めた一番の理由だと思う。安壇さんの他の作品を読みたいと言いながら読めていないので来年こそは読みたいですね。

主人公が抱いていたトラウマが再びチェロを抱いて演奏していくうちに解けていく様子、それなのに自分は嘘を吐いているという罪悪感が膨れていく様子、そしてすべてが崩れたあとに本当に演奏したかった曲を伝える描写にぐっときました。

 

『感応グラン=ギニョル』空木春宵

表紙に一目惚れして買った一冊、中身も非常に好きなもので、素敵な作家さんに出会えて嬉しいです。

「痛み」をひとつテーマとした短編集ですが、収録作の中だと「地獄を縫い取る」が一番のお気に入りです。「メタモルフォシスの籠」はそもそも設定があまりにも愛おしかったですし、途中で主人公については予想がついていたのですがあのラストになっていくのがとても良かったです。

 

『赤泥棒』献鹿狸太朗

別名義の漫画がとても好きで、小説も書かれるのか!と手に取った作品。

漫画でも感じていた登場人物たちが抱えている痛々しさが小説という媒体で表されることでより一層真に迫ってくる感じが非常に好きです。

読んでて苦しくなるのですがそれでも読みたいと思わされますね。今後も小説でお会いできるのが楽しみです。

 

『恋とそれとあと全部』住野よる

住野さんが描く青春、好きだな、と。

最後の問答に至るまでのひと夏の経験があったからこそ、二人は一歩進めたのでしょう。住野さんの描く、めんどくさい人間ってどうしてか魅力的なんですよね。め、めんどくさ……、そこまで考える?そこに拘る?って思う部分もあるけれど、そこまで考えられること、拘れることにどこか憧れがあるからなのかもしれません。

サブレとめえめえのこの先に幸あれ!という明るい気持ちで読み終えられて大好きな作品になりました。

 

 

『この夏の星を見る』辻村深月

ああ、私はコロナ禍で思ったより傷付いていたのだ。と気付かされてしまった。

好きな作家さんの単行本を全部買っているとあっという間に保管場所も財布も大変なことになるので当初は文庫になるのをのんびり待とうかと思っていた作品でした。ですが、『Another side of 辻村深月』に掲載されていたスピンオフ短編がとっても好きだったんですよね。彼が出てくる話を読みたいと思わされました。

そして買ってすぐに読み始めて、なんてことないコロナ禍でのエピソードでほろほろと涙が出てきて驚きました。私はどちらかと言えばコロナ禍で大切な人に出会えて沢山の思い出ができて、もとより趣味がインドア傾向なのもあってあまり傷付いていないと思っていたんです。

自分の傷と向き合って涙を流すのって、苦しいけれど必要なことだと思っていて、だからこの作品は私にとって大切なものになりました。

勿論、作中の彼らのままならない夏をなんとか楽しもうとする姿、その軌跡も大好きです。辻村さんの作品の中の大人たちって、本当に素敵ですね。

 

檸檬先生』珠川こおり

文庫版の解説がとても良かったです。

このお話は「先生と私」譚だから、この結末しかありえなかった。

檸檬先生が己の本当に伝えたいことを漏らしていた夏に少年はなにもできなかった。でもこれは少年を責めても仕方がない話だと思うんですよね。先生はほとんど「先生」としての立場を壊そうとしなかったから。

共感覚者としては感性が近かった二人だけど最後まで分かり合うことはできなかった。少年を「普通」に順応させることができたとしても、檸檬先生には先生がいなかった。

 義務教育の下りが好きです。彼女もただの中学生だってわかるから。教育を受ける義務ではなく受けさせる義務なんですよ。 

今年出会えた新しい作家さんのなかでは間違いなくトップ。二作目の『マーブル』もよかったのでたくさんの作品が読めることを期待しています。

 

サエズリ図書館のワルツさん紅玉いづき

紅玉さんの作品にまたがっつり嵌りなおせて良かったな、と思ってます。

それもこれもメディアワークス文庫での完全版発売が切っ掛けだったのでありがとうの気持ち。今年だとサエズリ図書館もそうですがクラウドファンディングの『Gift』が最高でした。同人誌だからこそできる、静かだけどそこに在る、愛の話。読むことができて良かったです。大事にします。

そしてサエズリ図書館のワルツさん、ワルツさんが全然全く完璧な人じゃないところが大好きです。図書館で本を愛していて、自分の本たちを手放すつもりがない、我儘な女である自覚のある人。そんな彼女の元に集う様々な事情を抱える人々の物語も素敵でした。

いつかまた、どこかでワルツさんと会えたらいいな。

 

『とんがり帽子のアトリエ』白浜鴎

ある程度ベスト10の候補出しをして、あれ?今年漫画少ないな?となりました。新規開拓が昨年に比べて少なかっただけで冊数としてはあまり変わらずに読んでいるはずです。

その中で今年初めて読んでシリーズを一気買いしたのがこちらのシリーズ。

魔法使いの秘密を知ってしまい、大きな失敗をしてしまったことで魔法使いになることになる。けして明るい導入ではないのですがココの魔法に対するキラキラとした憧れの心が読者としても魔法を知りたいと思わされます。

そして、そんな出自の彼女を迎えいれて仲間になったからこそ、同じ場で学ぶ幼い魔法使いたちは魔法使いの禁忌について思い悩んでいく、という構図も面白いです。だって本当は誰だって魔法を使えて、魔法を使えた方が幸せに生きられる場面がいくらでもあるから。

キーフリーら大人の魔法使いたちの存在もとても良いですよね。子どもたちを守り導く存在でありながらも彼らも彼らの思惑がある。ちょうどこれから面白い展開になっていきそうで続きが楽しみです。

 

BL部門

『息できないのは君のせい』澄谷ゼニコ

商業BL沼落ちの原因。ありがとうございます。

3月の初めに偶然TLに流れてきた広告が目に留まり、フルート奏者とサックス奏者のBLというのが気になって試し読みからの購入。ずぶずぶに嵌りました。

付き合ってからの二人ががっつり描かれていることに大感謝。巻を追うごとにバカップルと化しておりますが。バリトンサックスでレズギンカのメロを吹ける男、めろめろになってしまう。互いに互いの演奏が大好きなところ、愛しいですよね。

今年発売されました18禁同人誌の方もしっかり手に入れまして、志筑くん、えっちじゃない……???となりました。可愛いね。

スピンオフの『恋できないのは君のせい』も最高でした。この二人の姿も続刊で見られたらいいな。

 

『ぼくのパパとパパの話』ろじ

こちらは以前からpixivで連載されていた「赤ちゃん×世話焼きの鬼」を読んでいたろじさんの商業デビュー作品。上記タイトルも商業化して『青と碧』で発売されていてそちらも言わずもがな最高だったのですがこちらを。

もうね、この世界が早く来て欲しい。それに尽きる。

この世界の法が変わってからとっても長い時が過ぎているわけじゃなく、まだまだ男二人が子どもを育てているのは珍しい世界なんだろうけど、その中で家族をしている三人の姿には勇気がもらえるような気がします。

二人が付き合うようになるまでのエピソードや、ひろを迎えて、繋いでいきたいものがあるところが好きです。続編も連載中で、今からとっても楽しみにしています。

 

『二度目は正直』喃喃

ひとたびBL作家さんをフォローし始めるとオススメ欄に他の作家さんたちがたくさん流れる、そんな最近のX(旧Twitter)に助けられて出会った一作。

タチ×タチ、ヤリチン×ヤリチン、大好物。二人のタイプが違うところも、でも会話は合って仲良くなっていくのも、だからこそあと一歩踏み込むことに戸惑うところも可愛かったです。最後の一歩になるのが4P(しかも双方別のネコ相手)というところが賛否あるようなんですが、それくらいしないと踏み切れなかったのが不器用で最高です。

 

『ジョーク・スタート・ルームメイト』くらのね吉

ちるちるさんのBLソムリエ試験モニターで紹介していただいた一冊。

くらのね吉さんという作家さんに出会えて本当に嬉しい。絵柄や塗りのリアルさとかが非常にツボで、かつストーリーたちも好みだったんですよね。最高。

BL、色んなパターンがありますしあってしかるべきだと思いますが個人的にはゲイやバイである自覚がある二人の話がかなり好きなんだとも思いました。

友達から恋人になったことがなかったけれど、いざ友達と付き合ってみたら恋人としての姿を可愛いと思える。そんな話が好きです。

 

『やさしくおしえて』井戸ぎほう

井戸ぎぼうさんの作品の魅力をうまいこと言葉にする術を持たないのがもどかしい。

温度感、というのでしょうか。表情がいいんですよね。恋している顔、が恋している顔に見える。恋の苦しさとかままならなさとか、人間のずるいところとか。

読んでて萌える!好き!って昂るような作品ではないんですが、胸にじわっと残り続けるような作品たちだと思います。新作が読みたいな。

 

完結作品部門

『違国日記(全11巻)』ヤマシタトモコ

上手く語れない。

槇生ちゃんが大好きで、きっと折りに触れて会いたくなってこの物語を手繰るのだろうと思います。「あいしてる」って難しいね。

 

『霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない(全4巻)』綾里けいし

地獄にすら値しない、と綾里さんがおっしゃっていて、3巻の終わりが「ああ」で、どうなるのだろうかと緊張しながら開いた最終巻でした。

綾里さんの主人公たちは自己犠牲的なキャラクターが多いですが、その中でも朔くんはなかなかのトップを走り抜けてるんじゃなかろうか……。自分のいちばん大切な人の幸せを最後まで見届けて、その記憶が彼のそばに在り続けるから幸せなのかもしれないけれど。けれど、地獄にも値しない幕引きでした。

 

ダンジョン飯(全14巻)』九井諒子

ギャグセンスが楽しくて読み始め、しっかり練り込まれたファンタジーであることが明らかになってきたところで短編集に手を伸ばした作家さん。短編もどれも最高なのでぜひ。ここまで広げて大丈夫か?と思ったこともあったのですが、短編を読んだらそこの不安はなくなりましたね。

食べることは生きること。テーマがブレることなくしっかり完結しましたね。 

悪食王は作りたい世界を作れたのだと本編最終ページ、オークにコボルト、トールマンの子でわかるの良かったです。

冒険者ガイド、完全版が今から待ち遠しい。

 

 

『繭、纏う(全6巻)』原百合子

絵の美麗さに惹かれて一巻を買ってからかなりの時間が経ちましたがようやく完結、本当に最初から最後まで繭の中は美しく、美しい中での苦悩が説得力がありました。

繭の中から出た後の話がどうやら出るようなのでそちらが今から楽しみです。

 

『ばけもの夜話づくし(全12巻)』マツリ

友人に勧められて手に取った作品。

物語の大筋が見えてからが本当に面白くて後半巻は夢中で読みました。

ばけものの話のようでいて、とても「人間」の話でしたね。

 

『煮売屋なびきの謎解き仕度(全3巻)』汀こるもの

同じく汀こるものさんで「探偵は御簾の中」シリーズも完結しましたがこちらを。今までのベスト記事を見ていただければわかる通り、汀さんに出会ったのがかなり最近で、その中でちょうど現行シリーズが二つあることに大喜びしていた身なので両方終わってしまった……と悲しんでいます。

けれどどちらもなかなか好きな終わり方ではありました。

平均寿命は時代によって多少前後すれど、人生ってめちゃくちゃ短いってこともないよね。なんて思いました。

 

殿堂入り 斜線堂有紀作品

『百合小説コレクション wiz』より

選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい

 

『回樹』

 

『本の背骨が最後に残る』

 

『小説集 Twitter終了』より

Twitterが終了したので、ここでしか繋がっていなかった助手との関係が切れた。」

 

今年は今まで雑誌に載っていて読めていなかった作品たちがまとまってくれて嬉しい年でしたね。ご縁があって単行本二冊ともにサインがいただけたのもラッキーでした。

作品としては「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」「骨刻」「奈辺」「死して屍知る者無し」「痛妃婚姻譚」が特に好きでした。SFや奇想も大好き大好物で趣味を広げてくださって感謝していますが、個人的には現代ものが好きなのでそちらもたくさん読みたいなと思っていたり。

来年以降も早くも楽しみな予定が目白押しと言った感じで斜線堂さんの作品がベストに入らない年はないだろうなあ。毎年ハイレベルで趣味に合う作品を書いてくださる作家さんに出会えて幸福です。

最後に

冊数としては635冊でした。昨年とそう変わらないので社会人はこれくらいに落ち着いてくるのかな?という感じ。

がっつり読んだ月とそこまで読めなかった月でかなりペース差があった一年でもありました。

 

今年の特徴はわざわざ部門を設けたBLでしょうか。

元から好きではあって、二次創作とかネットで読めるオリジナル作品などはかなり愛読していたのですが、所謂商業BLと呼ばれるものは一時期嵌ってからは特定の作家さんのみになっていました。

詳しいことは上で語っているので省いて、年間10冊未満だったところが今年だけで100冊近く読んでいるので急な沼落ちの恐ろしさを感じます。

 

後は、殿堂入り作家さんが来年には増えていそうな予感もしますね。

現段階で汀こるもの先生と紅玉いづき先生がリーチです。お二方とも来年も何かが出てくれると嬉しいな~と思っています。心の中の殿堂入り作家はいればいるほど良いものなので。

ずっと好きな作家さんでもシリーズものが多かったり寡作だったりすると自己ルール的に殿堂入りにならないバグはある。

 

あまりまとめ部分を長々語っても仕方がないのでこのあたりで。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。

来年も感想はサボることがあったとしてもたくさんの本に触れていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。