今年までのベスト10振り返り

少し前の記事で今年のベスト10をそろそろ選定しねばという話をしておりましたが、令和四年以前のベスト10を記録しておこうという記事です。

もう年が明けてるじゃん、という。

ほんとうは大晦日中に出したかったのですが、ぎりぎり書き終わらず。惜しかった。

 

令和元年からなんとなくルールを作ってその年のベスト10を選んでいるんですよね。

後々振り返ったときにこの年にはこんなものを好んでいたんだ、これだけの冊数を読んだんだ、と思い出すよすがになるので。なんとなくのルールは以下の三つです。

  • 私が今年初めて読んだ小説・漫画
  • 同作者はベスト10の中で重複しない
  • シリーズものの途中は含まない

あくまでも私が読んだってところが大事なので急に古い作品とかが入ります。

このルールだとあんまり作家が偏らない(シリーズを除くため)のがいいと思って運用していたんですが、とある作家が三年連続でベスト入りし、なんなら放っておいたら四年目も入りそうです。それを踏まえてひとつルールを追加します。

  • 三年入ったらその作家は殿堂入り

こんな感じで。

既に殿堂入りしている作家さんの作品もざらっと年末に振り返れたらと思います。

ではベスト10、順不同。三年分まとめての振り返りを始めていきます。

その年の年末に考える瞬間最大風速的な好き!なので今ぱっと思い出せずに薄目の感想になったりならなかったりしますが許してください。大好きなことに嘘はないので。ちゃんと読み返して感想を書きたいなと思います。

 

かなり長めになりそうなので目次も置いておきますね。

 

令和元年(2019年)

十二国記小野不由美

有名であることは知っていたけれど手を出していなかった十二国記を初めて読んだのがこの時だったらしいです。新潮文庫版で魔性の子から順番に最新刊まで追いついて、続きをそわそわと待っているところ。

小野不由美さんは『残穢』だけ読んだことがあってそれが怖かったのもありそれ以外をがっつり読まずに過ごしてました。それから十二国記の新刊が世界を賑わせたのをきっかけに読んだんですよね。この後に新装版の『ゴーストハント』も読みまして、より一層この壮大な世界の終わりを見届けたい気持ちが強くなりました。

胎果であるふたりが邂逅して、物語としてはこれからなんだろうと思うんですよね。

 

今日からマのつく自由業!喬林知

 こちらも、有名ではあるけれど手を出していなかった本のひとつでした。

さくさくと読みやすいけれどちゃんと政治をしている部分がかなり好みの味がしました。キャラクターたちそれぞれが濃くって魅力的で、なにより主人公が格好良いんですよねえ。つづ、き……、グッズとかがちょこちょこ出ているのは存じておりまして心惹かれています。悩み。

 

チェーザレ 破壊の創造者』惣領冬美

完結しちゃいましたねえ。ベスト10に選出したときにはそんなことは知りませんでしたが。まったく別の作品でチェーザレ・ボルジアという人物に出会いまして、その作品ではほとんど史実での彼を知ることができないのもあり、読みやすさを重視して漫画を手に取った、はず。さすがに経緯は曖昧ですね。

絵の美麗さと、時代考証がしっかりしていて読み応えがあるところが大好きです。歴史に疎いので同時代の著名人が出てきたときに同時代人なんだ!?なんて驚きながら読んでました。完結してしまった今は史実ネタバレなんてものも関係ないので個人的に調べて楽しんでいたりします。

 

ハイキュー!!古舘春一

2019年に初めて読んだらしいけれど、ハイキューの最高なところって最後のほうだと思うんですよね。私は部活物でその先について語られるとぐっときてしまうのです。なので先生がいちばん好き。

それはそれとして鴉と猫の戦いが大好きです。

 

『アクタージュ』宇佐崎しろ

語る言葉が見つからないので手短に。この年のベストに入れるくらいに大好きでした。特に百城千代子が好きです。

宇佐崎さんの絵に惹かれる気持ちに変わりはないので、Twitterで見てにこにこしてます。

 

魔法少女育成計画遠藤浅蜊

アニメを見てから原作に興味を持って読んだはず。

この年はどの巻まで読んでいたのだか思い出せないのですが、プフレとシャドウゲールの関係が好きですね。主従……。なので現在は続きを心から待ってます。

あとは773さんとテプセケメイも好きですね。

本編の内容的にろくな活躍もせずに退場してしまう魔法少女たちも多いのですが、短編集などで日常や活躍を垣間見せてくれるところがとっても嬉しいです。魅力的な子ばかりで、それがあっけなく失われていくのもまた醍醐味ですから。

 

薬屋のひとりごと日向夏

主人公が何より魅力的な作品って大好きになっちゃいますよね。

ヒーロー枠である壬氏も正直序盤は胡散臭さがすごかったのですが、政治的な彼の手腕が出てくるほどに面白く好感度があがっていくんですよね。

猫猫には見えていない政治的部分がかなりあるところも好きです。猫猫に見えている社会的弱者の事件が上に上にあがって、なにかを引き起こしていく感じ、というのでしょうか。

どういう風に進んでいくのが、楽しみに読んでいる作品のひとつです。

 

『コールミー・バイ・ノーネーム』斜線堂有紀

今でも斜線堂さんの作品でいちばん好きなのはこの作品です。

なんでここまで刺さっているのかは正直わからなくて、よって感想を書こうと思うと薄っぺらくなるんですよね。難しい。斜線堂さんの作品のなかで私の感情や経験に近しいと思うものは他にあるのですが、ナンバーワンが揺らがない。いつかちゃんと言語化したいものです。

 

『まほり』高田大介

『図書館の魔女』という大傑作からしばらく沈黙なさってた高田さんが新作を!という衝撃と嬉しさを今でも思い出せます。

剣と魔法ではなく、誰にでも使える言葉の魔法を描くファンタジー作品であった『図書館の魔女』とは一見かけ離れて見える、現代日本を舞台とした民俗学ミステリ。でありながらも資料を読み解く面白さにぐいぐい引っ張ってくるボーイミーツガール的ストーリーは健在。

中盤、ずらずらと並ぶ資料はなかなかに敷居が高いものですが、主人公たちが読みこんで解説してくれるのでそこまで恐れることはないです。読むとまた楽しいんですけどね。

最後にしっかりどうしてこの謎に挑んだか?も示してくれるので、読後感はとても良かったです。かつての恋がそこにはあったのでしょうね。

 

『祝祭と予感』恩田陸

ベスト10を考え出した最初の年だったのでちょっと今のルールだと外れますね。『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ短編集なので。 

蜜蜂と遠雷がとても好きで、彼らとまた会えるこの短編集も大切な一冊になりました。特に、「春と修羅」の作曲事情を知ることができる一編が大好きです。

 

この年はとても余裕があったらしくたくさん読んでます。

小説漫画合わせて771冊でした。

 

令和二年(2020年)

『ある人殺しの物語 香水』パトリック ジュースキント

感想が出てきません!後述しますがこの年の感想は全体的に薄いです。

話の筋やらは覚えているんですが、ネタバレを排してここ好きができるほどにすぐに取り出せる位置に記憶がいない……。

芳しい匂いから臭い匂いまで、文章から香ってくるようなのがとても好きでした。翻訳も良かったんですよねきっと。原文だとどのように言い表されているのか気になる一方、原語のネイティブじゃない以上、その感覚は掴めないと思うとちょっと惜しいですね。

読み直したいな。

 

『マイ・ブロークン・マリコ』平庫ワカ

心の柔らかなところにぐっさりと刺さったということだけを鮮明に覚えています。読み返すのにかなりエネルギーを要するタイプの作品だったはず。

主人公が発している感情の奔流に流されるような、巻き込まれるような勢いのある読書でした。ちゃんと覚えてないの丸出しなので、気合入れて読み返したい、ですね。勇気がいる。

 

『詐欺師は天使の顔をして』斜線堂有紀

 斜線堂さんの描く二人の関係が詰まってて大好きな作品です。

運命と出会ってしまった人間を書くのが上手いんだわ斜線堂さん……。ただ一人の運命のために推理するタイプの特殊設定ミステリー。

「失踪した当時は殺してやりたいとまで思っていたくらいなのだ。(中略)この一瞬の逢瀬だけで、きっと要はこの先数十年すら待つだろう。」にすべて詰まりすぎている。

 

『ずっとお城で暮らしてる』シャーリイ・ジャクスン

好きな作家さん数人がオススメしていて気になっていた作品を手に取ったんでしたっけ。読んでみたらば非常に好みでした。好きな人が好きなもの、感性に合うんですよね。これからも積極的に読んでいきたい所存。

どうやら村のみんなから嫌われている様子の主人公一家、家から出てこないお姉さん、事件の一日を振り返り続けるおじさん。不気味な舞台設定と怪しげな事件が思わぬ方向に転げていき、あのオチを迎える、と。

オチがまたいいんですよね、タイトルの通りというか。「ずっとお城で暮らしてる」んです。何度読んでもぞくぞくと興奮する作品のひとつです。

 

『レオナルドのユダ』服部まゆみ

確か、ベストを記録しだす前に『この闇と光』を勧められて読んだんですよね。それをきっかけに服部まゆみさんの作品をのんびりと読んでいて、その中でもかなり刺さったのがこちら。

割と歴史を下敷きにした作品を書かれる方なんですが、レオナルド・ダ・ヴィンチはうっすらながらも事前知識がある人物なので入りやすかったというのはあります。

 

チョコレートコスモス恩田陸

なんで続きがないんだ……、と絶望する作品。

蜜蜂と遠雷』の演劇バージョン、なんていう紹介のされ方をしているのを見かける作品です。実際、近しいものは感じますね。

響子と飛鳥はまだ出会ったばかりで、この二人が巻き起こす化学反応をもっと見たかったなと強く思います。

 

『姉の友人』ばったん

姉の友人、今日子さんはずるい人。登場人物全員がちょっとずるくて、そんなところが大好きでした。寂しくて、宝物はもうそばにはいない。たとえずっと大好きであろうと埋まらない。

絵から漂う色気に惹かれて買いました。内容も私好みで切なくて、「愛」でした。

こういう話では嫌な感じのポジションになりそうなりゅうのすけくんがいい味を出してるんですよね。

 

『カラオケ行こ!』和山やま

なんでしょう、淡々としているのにじわじわと面白い。

疲れていたこの年にこの漫画家さんに出会えたのは幸運でした。

接点の有り得なかった二人がひょんなことから出会って、情を持つようになる話、好きなんですよね。その情がなんか思ったよりもかなり重たいというびっくりはあれども。現在、続編が連載中とのことで単行本にまとまるのを切に待ってます。気になりすぎる。

 

『夢の端々』須藤佑実

心中はハッピーエンドと嘯くタイプのオタクを長年やらせていただいております。そんな私にとってかなり辛いのが心中失敗後に続く人生。

もろにそれを描いた作品です。辛いけれど好き。

 

ベスト10に足りてないじゃん。この年、とても余裕がなかったんですね。

読書量も300冊ということで前年の半分以下ですし。

それでも好きな物語には出会えているので良かったな、と思います。

にしては記憶がかなりぶっ飛んでいるので精神の余裕、大事。

 

令和三年(2021年)

『丸太町ルヴォワール』円居挽

これ、本当は選出しちゃ駄目な奴。実は大昔にこの巻だけ読んでいたはずなので。

その時は刺さらなかったんですが読み直したらするっと沁み込んで、そのままシリーズ読破までいきました。なのでこの年のベストからはどうしても外せなかったんですよね。過去にピンとこなかった作品でも時を経て読んだときに肌に馴染むことがあるのだという大切な学びを得ました。

シンプルに積み上げていく会話劇が面白いです。多重推理ものとかにあたるのかな。あまりミステリ用語には詳しくないんですが。シリーズを読み進むほどにキャラクターに愛着がわいて、だからこそ最終巻の展開にえっ???となったのですが、ああまとめてくるとは……!

城坂論語という男にどうしても惹かれるのがかなり悔しい。

 

『ブルーピリオド』山口つばさ

美術館に行くことは好きだけど、アートとかはよくわからないという鑑賞者である私にするっと入ってきた美大受験漫画。にもう留まっていませんが。

芸術って何だろうと主人公と一緒に迷ったりするのが楽しいんですよね。「縁」の絵そのもののように、様々な出会いを通して自分を見ていくような感覚が心地よくも辛くもあって、それこそが縁で、人生で、きっと表現なのだとも。

ユカちゃんが大好きなので、今どんなことしてるかな~と考えたりするのが楽しかったり。彼らしい道を歩いていますように。インスタはたまに更新されますが(笑)

 

『ののはな通信』三浦しをん

書簡形式で綴られる、ののとはなの長い長い話。

返事が来る前にどうしても我慢できずに書いてしまう手紙、授業中にこっそり回す切れ端に書いた手紙。学生時代の二人の恋の顛末。そして一度ばらばらになったのに、またつながる二人。紙の手紙だったものが電子メールになり、年号が変わるほどに長い時間の物語。

章の切れ目切れ目で二人の間には埋め難い断絶が生まれて、相手には届かない手紙を書くんですよね。それなのにまた、縁が繋がる。だから、このお話のどうとらえるべきかわからないラストに私は希望をみてしまうんです。あなたに届かないかもしれないメールを書くというその行為こそ、まだ繋がっている証明じゃないですか?

 

『霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない』綾里けいし

私は綾里さんの書く現代伝奇モノが大好きです。

そもそもデビュー作品の『B.A.D.』から追っていて、他の作品も全部読んでいるくらい大好きな作家の一人なんですよね。綾里さん。『B.A.D.』の本歌取りと作者がおっしゃっている通りにたっぷりとモチーフを借りながらも全く新しい、この時代の伝奇モノに仕上げているのが素晴らしいです。

主人公とお嫁さん、そして運命のヒロインという綺麗な三角を描く作品が多い中、珍しく?主人公にとっての運命のヒロインとお嫁さん枠が一緒なんですよね。綾里さんファンとしてはちょっと新鮮(終焉ノ花嫁もそうといえばそうですが、あちらも三角ではある)。主人公があらゆるヒロインの運命しすぎでは?とは思いますが……、完結してから語りたいかも。

 

『本と鍵の季節』米澤穂信

米澤穂信さんの作品は『氷菓』シリーズを中心として読んでいます。

そんな中、男子高校生二人をメインにして進んでいく本に関するミステリ短編が出ると知って興味を持ちました。読んでみたらば、たいへんに好みでした。

実は読めてない他の作品たちも手に取りたいです。

 

『開かせていただき光栄です』皆川博子

数年前からちまちまと皆川博子さんの作品を読んでいまして、この年に出会ったこれに心臓を撃ち抜かれました。続刊である、『アルモニカ・ディアボリカ』『インタヴュー・ウィズ・プリズナー』も良かったのですが、この年にはこの一冊しか読んでいなかったはず。

解剖学に限らず外科が低位に見られていた時代のロンドンの不衛生な感じが文字から漂ってくるよう。エドワードとナイジェルの関係が魅力的で、解剖教室の皆の和気あいあいとした雰囲気が楽しくて、だからこそあのラストが胸を抉るんですよね。

 

『違国日記』ヤマシタトモコ

『三角窓の外側は夜』とぎりぎりまで悩んでこちらを選びました。先に読んだのはこちらで、これを読んでもっと読みたい!となって『三角窓の外側は夜』を手に取ったんですよね。

登場人物が全員、ちゃんとそこにいる良いところも嫌なところもある人間なところが好きですね。私自身がいちばん共感を覚えるのは槇生を筆頭とする「物語が必要な人間」ですが、他でもない物語の中に「物語を必要としない人間」を描いているところに好感を持ちます。

朝のある種の無神経さにうわ……となることもあるんですが、作品自体が無神経なわけではなく、成長に繋がっているので不快感はなく読めるんですよね。

笠町くんと槇生の関係がとても色っぽくて好みです。えみりの恋の甘酸っぱくて、少し苦いところも。

 

『パラダイス・クローズド』汀こるもの

お前は汀こるもの作品が好きだ、と言われていたのになんとなーく手に取ってなかった。なんとなーく手に取らなかっただけなのでなんとなーく手に取って沼に落ちる。

いや、まあ、好きですよね?

大変な関係性を見せてくる双子とたくさんのお魚蘊蓄。謎解きをやらないわけではないがどう考えてもそれをメインに置いてない構成。かなり、好き。

とんとん拍子にシリーズ既刊を集めて、一番好きなのは『フォークの先、希望の後』かな。

登場人物たちの価値観の差異、巻を追うごとにそれが変遷していくところが読んでいてとても面白いです。好き。続刊……。

 

『花伽藍』中山可穂

中山可穂さん初読みにして完落ちさせられた作品です。

中山可穂さんの名前は『娘役』を初めとする宝塚モチーフの作品を書いているというので知って、手に取ろうと思ったときにたまたまこの作品が目についたんですよね。結果、大正解でした。

「鶴」と「燦雨」が好きです。それぞれの話自体もですが、短編集としての構成でこんなにも美しいことがあるかしら、と。鳥で始まり、鳥で終わる話なんですよね。

 

『愛じゃないならこれは何』斜線堂有紀

はい。三年連続で入ってたのは斜線堂有紀さんでした。今年も正直入れてしまいそう……、ノンシリーズの新刊が毎年コンスタントにでるのでどうしても強いです。年末に発売された本だったと記憶しているのですが……?とはいえこちらを外したならば『ゴールデンタイムの消費期限』が入ってきたのだろうと思うので結果としては変わりませんかね。

収録作のどれもぐっさりと刺してくるような鋭さを持っていて、設定が自分からは遠いと感じたとて感情は誰しもが持ちうるものを書いてるんですよね。「健康で文化的な最低限度の恋愛」刺さる人間多いんじゃないかな~と思います。個人的に好きなのは書下ろしの「ささやかだけど、役に立つけど」です。

 

この年は510冊!

電子書籍を解禁したので漫画をたくさん読みました。

これに続く2022年も漫画多めになりそうです。

今までの人生であんまり漫画を読んでいなかったのもあるので、しばらくは楽しめそうですね。

 

ということで、長々続けましたが以上!

令和元年~令和三年の三年分、どばっとまとめて振り返りでした。

これを書いている今現在、令和四年分のまとめが書けておりません。選出は終わっているんですけどね……。

最後にはなりますが、新年あけましておめでとうございます。

更新頻度はあまり高くないし、内容も薄いですがのんびり続けていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。